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青函トンネルなどなど [青森発見!]

ここから約54kmの先.
ふたたび日の光が差し込む地に流れているのは北海道の風.
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青函トンネル 本州側坑口です.
正式名称”青函隧道”の四文字.揮毫は当時の中曽根康弘内閣総理大臣.
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今日も長いぞ読書の秋ヴァージョン(笑)

高倉健主演の映画”海峡”は,青函トンネル工事を舞台とした
土木屋たち,トンネルマンの物語です.
冷静に映画として評価して見ると,
ドキュメンタリー性を意図的に強めている分だけ,物語としての深みはあまりなく,
青函トンネル工事誌概要版+若干の人間模様といったストーリ展開のせいか,
決して名作として語り継がれる類の映画というわけでもないのですが,
子どもの頃,つれられて見に行って以来,心に焼き付いてしまった映画の1つです.
丁度この頃.
青函トンネル開通,青函連絡船の廃止,青函博覧会の開催と,
今にして思えば,ある意味青森が,めまぐるしく現代へ向かって加速を始めた,
1つの節目の時代だったようにも感じます.自分的には,ですが.
まぁ思春期まっただ中だったこともあって.物思う年頃だったのですね(笑)
北の果て三厩という土地に生活する人々の風景,龍飛岬の厳しい気候環境.
自分が暮らしているのと同じ県で行われていた巨大なプロジェクトのすごさ,
人間の大きさからは,とても比べられないほど,
遥かにはるかに大きな構造物を作っていく技術者達の気迫と不屈の信念.
この映画から受けた衝撃が,日本の未来を担おうとする一人の若者を奮い立たせ,
そして技術者としての今の自分を作ったと言っても過言では・・・ある(^^;)
いくら何でも,さすがに,そんなわきゃ無い.

ただ,この映画が,今でも,仕事に行き詰まったとき,疑問を感じたとき
自分自身のありかたや存在価値に悩んだり落ち込んだとき,
ちょっとした,活力剤になってくれる映画の1本であることは確かです.
うぉ~し,俺もやるぞ~なんてね.
単純なもんなんスよ・・・オトコなんざ^^

繰り返し見る同じ映画ではあっても,
歳を経ると共に,ちょっとずつその見方と,お気入りのシーンが変わってきました.
最近とみに気に入っているのはラスト付近.
先進導坑が開通し,役目を終えた高倉健扮するトンネルさん(阿久津)が
竜飛を去る直前,挨拶がてら集落の居酒屋へ立ち寄るシーン.
そこにいるのは,かつて竜飛から身を投げようとしたところを阿久津に救われ,
ひそかに阿久津に恋しつつも,じっとその気持ちを心底に秘めつつトンネル男たちを見守り,
そして竜飛の地を自分の終の棲家と思い定めた女性,多恵(吉永小百合).
2人のあいだにも,いつしか20年余の歳月が流れている.
ジャッパ汁を温め,11年ぶりに口にする酒を徳利に燗し,阿久津にそっと注ぐ.
かみしめるように口に含み,そしてぐっと飲み干す阿久津.
再び徳利を注ごうとする多恵の手から徳利をとり,替わりにそっと猪口を乗せる.
とまどいつつ,そして溢れそうになる想いをじっとこらえつつ,
対の手を,そっと猪口に添え,阿久津の酌を受ける多恵.
こみ上げてくる感情と涙を必死におさえ,深々と阿久津にお辞儀をし,
そしてあたかも,口に出してしまいそうになる20年の想いを呑み込むかのように
猪口の酒を静かに二度含み,もう一度阿久津に向かって深々と礼をする.
さりげなく指先で猪口の口先を拭き,杯を戻すその仕草の美しいこと.
その間,二人の間に言葉は無し.
ただ,ただ,互いの表情と徳利のやりとりだけで,20年を巡る深い会話が進んでゆく.
お酒を巡るやりとりのシーン.日本映画にはしばしば登場しますが,
私の中では,堂々Best1のシーンです.見るたび吉永小百合に恋します.
そして,ついついキッチンへ行って熱燗を1本つけてしまいます^^
うぉ~し,俺も呑むぞ~なんてね.
単純なもんなんスよ・・・オトコなんざ^^

私が子どもの頃には,
まだこの映画に出てくるような三厩・龍飛崎の風情が少し残っていたように思います.
今は,すっかり港も道路も整備されて,殆ど面影は残っていません.
わずかに,今別から三厩・竜飛へと抜ける道路沿いには,ぽつりぽつりと
私の心に焼き付いている,あの龍が飛び波荒巻く漁村を感じさせる光景があります.
その光景さえ,おそらくこの先十年とせず,消えていってしまうのでしょうけれども.
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       * * * * * * * * * * * * * * * 

ところで,電車に乗って青函トンネルを通ったことはありますが,
海の下を横断する,この鉄道トンネルとしては世界最長の大構造物を,
そこに立ち止まり,しっかと五感で体感したことはありませんでした.
青函トンネルには,定点と呼ばれる2つの位置,
すなわち竜飛海底駅と吉岡海底駅があり,ここに下車して体感する,という手が1つあります.
ただし,これには相応の時間と手間を要します.
もう1つ.
龍飛崎の青函トンネル記念館には,かつて作業坑として使用されていた本物の斜坑に
現在も観光およびメンテナンス用としてケーブルカーが通っており,
これに乗れば,本坑深度(海面下240m)までは到達できずとも,
かつて作業坑道の1つとして使用されていた,海面下140mの地点までは進むことが出来ます.
ちなみにこのケーブルカー”青函トンネル竜飛斜坑線”は日本一短い私鉄,だそうです.
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金属の扉をくぐるとそこは地上駅.
かつてもここから,作業員達は施工現場へと下っていった.
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斜坑の勾配なりにつくられているケーブルカー
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厳重かつ頑丈な鋼製の扉.サイレンの電子音とともにゆっくりと開いてゆく.
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扉は完全に開いた.いよいよ斜坑を地下に向けて進む.
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断続的な電子音が鳴り響く中,ものすごいスピードでケーブルカーは下る.
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そして,海面下140mの体験坑道へ.
レール自体は実はまだまだ下へ.本坑位置海面下240mまで続いているが
我々一般人が進入できるのは,ここまで.
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体験坑道は,やや湿気多く,壁面も全体に湿り気を帯びている.
当然水面より下なので,地下水位は100m以上も上ということになる.
壁面コンクリートは塩害様を呈している.浸水の成分はやはり海水に近いのだろう.
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坑道のつきあたりには,またしても鋼鉄の扉が.
この先にもトンネルは続く・・・えっ?どこまでかって?
言うまでもなく,北海道までです^^.
青函トンネルは列車が通る本坑と,それに併設する2本のトンネル
排水用のルート,送気・排気用のトンネル,
更に定期メンテナンスや避難ルートを想定して色々な坑道が併走しているんですね.
この中では,換気への負担等を考慮し,移動は自転車もしくは電気自動車だそうです.
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さて,最後に.
下記は本州側から青函トンネルに入る前の最後の駅.津軽今別駅です.
今は津軽海峡線のみが通過しています.
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いずれは,ここに北海道新幹線が通る日が来る・・・ハズ
なので駅舎の周りは,いつでも新幹線用にホームを増設できるように
しっかり計画されている.
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奥が津軽海峡線の線路.
線路からこちらへ舗装されている部分が将来的には新幹線の線路になる部分
ここで合流するんですね.

ん?新幹線と在来線では線路の幅が違うじゃないかって?
大丈夫なんです.下の写真をみてください.
写真は青函トンネルじゃなくて,もう少し手前のトンネルですが,
線路の位置とトンネル径とのバランスが妙じゃないですか?
線路同士の隙間が広くて,上下線ともに,かなり壁側に寄っていますよね.
そう.将来的にはそれぞれ内側へ新幹線の幅でもう1本レールを追加するんです.
全部でレールは3本.そうすれば新幹線も在来線も通過できる.これが三線軌
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新幹線が通ることで,在来線が通過するメリットは少なくなるわけですが,
青函トンネルの担っている役割というのは,なによりも貨物流通のウェイトが大きいのです.
だから,新幹線開通後も,貨物列車は走行できるようにする必要があるのですね.
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写真はEH500型機関車”金太郎”
この力持ち列車のおかげで青函トンネルの連続勾配にもめげず
単一機関車で(まぁ元々が重連型みたいなものですが)ひっぱることが可能になった.
ちなみに青函トンネル内は湿度がもの凄いので,
それに対応した車体しか通ることが出来ないそうで.
いずれ新幹線が開通したならば,
もちろん新幹線も青函トンネル仕様・・・ということになるんでしょう.

しかし秋風のせいか,どうも最近は,われながら文章が感傷的でイカンガー
毎度,長ったらしい文章を,最後までとばし読み感謝です(^^)


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つるひめ

今、TVで黒部ダムの映画をやってます。個人的には青函トンネルの方がはるかに技術的に困難な事業だったのではないかと思ってます。
「海峡」映画有ったんですね。
私が20才の時、竜飛崎に立った記憶があります。見渡せば向かいに北海道が見える。8月だというのに風が冷たく強く、周辺は背の低い藪が生い茂っていたように思います。
出身は道東の釧路ですが、そこと同じくらい、厳しい自然を感じさせてくれる場所でした。
「海峡」一度見てみます。再びチカラを得られるような気がします。
ありがとうございました。
by つるひめ (2009-03-22 21:28) 

Yamada

つるひめさま,コメントどうもありがとうございます.
そうですね...青函トンネルについては技術的に困難というよりも
日本の(というか当時は世界の,ですね)土木技術の最先端であった
国鉄の鉄道技術屋集団を以てしても
半ば”ムチャ”という言葉に近かったような気もしますが(笑)
でも,青函トンネルという1つの実験場・技術ショーケースの下で
現在に至る多くの土木技術が開発・実現していったことを考えると
現代の土木屋のハシクレとしては,素直に凄いなぁとも思います.

でもまぁ,それは黒部ダムにしても同様です.
どちらが困難というのは比べるものでも無いのかもしれません.
どんな事業であれ,やはり容易にカタチへと至るものではなく,
まして規模の大小はあれど,
何らかの形で自然と真正面から対峙しなければならないのは
土木屋の宿命なのですけれど,
確かにつるひめ様のおっしゃるとおり,自然と真っ向から対峙することには
恐怖感や不安とともに,何か自分自身に力をみなぎらせてくれるものが
あるようにも思います.

そういえばイットキ,NHKのプロジェクトXが巷間で話題になっていた頃
よく同僚なんかと呑んでいてハナシになったんですが,
我々が介在して動かす程度の,ごくちっぽけな事業や計画・設計であっても
黒部だとか青函と(自分自身の中では)全く変わりはなくて,
同様に技術的悩みがあり,自然との戦いがあり,
そして何かを乗り越えた瞬間があり
”NHKの取材クルーがネタにさえしてくれたら,絶対に俺らの仕事でも
 プロジェクトXの1話分作れるよなぁ”って言って笑ったものですが
そのせいなのかどうか,私の周囲の同業者仲間にも
ナゼか竜飛崎好きという人は多いんですよね...
それは,もしかしたら自分自身の立ち位置を
再度確認出来る地点だからなのかもしれません.
by Yamada (2009-03-23 03:46) 

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