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蘇州そして帰還(西海岸放浪その5) [旅日記]

いやぁもう,11月の22日.
この日の降雪はハンパではなかった.
10時からの会議に間に合わせるため,朝5時にホテルで目を覚ました私は
窓の外の景色,雪の秋田市街を見て愕然としてしまったわけで.

それは,つい数時間前,川反から千鳥足で戻ってきたときとは,
全く別世界の銀世界.
一瞬,おでこの辺りに縦線が,約5本ほど,つら~っと下がって来たわけですが,
そんな,まるちゃんのマネをしている場合ではない,という状況にやっと気付き,
あわててシャワーで目を覚まし,身繕い.
降ろしても降ろしても,その傍らから,どんどん積もってくる車の雪ももどかしく,
エンジン始動,一路,夜明け切らぬ秋田の町を出発したのでした.

さて,時は数時間さかのぼる.
その前日,どうにかこうにか八森~能代と日本海沿いを走破し
秋田へと到着した私は,会社で押さえてくれた宿が川反に近いことに気を良くし,
ふらりと夜のお散歩へと出かけたのだった.
市内には残雪すら殆ど無く,直前まで走り抜けてきた地とは別世界の様相.
まぁ,そう言う意味で油断していたことは否めないのだけれどね.
確かに吹く風は,非常に冷たく,日本酒恋し,な気分だったのである.
いずれ,明朝は早出ということがあったので,さらりと軽く呑めそうな所はないかと探索.
川反のメイン通りに日本酒の瓶がならぶ,良さゲな構えのお店を発見.
店名を”蘇州”という.
あとでご主人に聴くところによると川反でも数代続く,歴史の古い店だそうだ.
酒瓶が並んでいる,その上に,神棚がまつってある.一目でこれは良い店だと思った.
お店本体は割烹のような店になっており,そのセカンドというようなイメージである.
ちょっと高そうかな~という気もしたけれど,そこは出張中.
オレは西海岸を走破してきたのだ,と妙な自信を持っているから,気が大きい(笑)
実際には非常にリーズナブルに楽しい思いをさせてもらった.


この店には秋田の全ての酒造蔵(40程あるそうです)の全ての銘柄が揃っている!
要するに,ここのカウンタに座れば,秋田のお酒なら何でも呑める.
とはいえ,秋田の酒にはあまり明るく無いので,女将(というよりママって感じですが)に
オススメで純米系を色々と燗でもらうことにする.


アテの方も,ハタハタの馴れ鮨,いぶりがっこ,天然舞茸の土瓶蒸など
秋田らしいところを色々と.

この店では,日本酒の瓶すべて,その都度空気抜きをして,冷蔵保管している
実に丁寧に丁寧にお酒を扱っている.ワインなみである.
私個人としては,日本酒は少し空気となじんだ位が好みだな,という
要するに,いささかヒねくれた性格をしているもので
そこまでしなくても・・・と思ったりもするのであるが,一般には結構なことなのである.
カウンタの傍らには,釜に湯が暖まっていて,燗をたのむとそこで程よくツケてくれる.
女将も日本酒には色々と詳しいようで,色んな話をしてくれる.
山廃って何?と別なお客さん方に問われて妙な回答をしていたり,
その話には,いささかアヤシイところもある^^;が,まぁ聴かなかったことにしたい.
元気が良く,ちゃきちゃきしていて,それでいて気配りと面倒見がよい.
片や奥で調理を担当するご主人は,朴訥とした感じで問われると答えるという雰囲気
しかし,がっしりと地に足が着いた商売をしている人間に独特の落ち着きと安心感がある.
こういう店は良い.
女将はかなり呑むが,ご主人は全く呑まないのだそうで.あらま我が家と丁度逆である
で,話の流れで歳を聞いて驚いた.その年齢よりも,10才は若く思える女将なのである.
お子さんの歳を聞いて,確かにそんなもんか,と納得はしたものの.

閉店時間は11時.
知らなかった私は,ついつい長居をしてしまったわけだけれども,
この潔い時間帯が実に好ましい・・・

さて,ふたたび話を明け方へと戻そうか.
幸いにして夜明け前の高速道には,走る車もほとんど無く,
私の行く手を遮るものは何もない・・・ハズもなく,猛吹雪で前が見えない.
走る車が無いということは,たんまり道路上に雪が溜まっていると言うこと.
新雪のスキー場は嬉しいものですが,新雪の高速道はあまり嬉しくない.
いや,全然嬉しくない.
ハンドル自体は,むしろアイスバーンよりも,よっぽど新雪の方がラクなのですが
何が問題と行って,夜のとばりの中,
道は真っ白,目の前は吹雪で真っ白,左右路肩も法面も中分も対向車線も真っ白
私の顔面も真っ白.
要するに,どこが道なのか判らないのである.
最悪,路肩に突っ込んでも,雪がクッションになるのでバンパーくらいで済むだろうと
覚悟を決めてカーブ道をひた走る.
目の前に(といっても,本当に目の前まで近づかないと認識できないのだけれど)
どっかのトラックのテールランプが見えたときには,本当に救われた思いがした.
救われた記念にカシャリ.そんなことしている場合か(bloggerのカガミである)

そのうち,新たな問題が生じる.
夜のウチは氷点下で雪質もサラサラだったのだけれど,
夜明けとともに,すこしずつ気温が上がってきたのか,ベタ雪に変わってくる.
そうなると,どうなるか.
フロントガラス上で,一旦シャーベット状に溶解したのち,再凝固するのである.
フロントガラスが氷の壁状態.当然ワイパーブレードも凍ってしまったので,
最早,なすすべ無し.ま・・・前が見えん.
停まろうにも路肩なんて無いし,いくら通行量が少ないとはいえ
まさか片側1車線のど真ん中で一時停止するわけにもいかん.
結局,デフロの吹き出し口近くであるところのフロントガラス下面,
その,ごく数センチの,かろうじて凍っていない隙間から外をのぞき込みつつ走行.
コシを浮かし,半かがみで前へのめり出し,
とても傍目にゃ見せられん状況である.まいった.

やはり日本海側は侮れない,と改めて思っていたわけですが
実は,この日の雪は東北全域にわたるもので,仙台市内でさえもそれなりの降雪があった・・
と,身を以て知ったのは,この後さらに数時間先のことであり,
この時点では,必死で秋田道を走行しつつ,
せめて東北道本線までいけば,雪は消えるだろう,
この最悪の状況を突破して,路面にアスファルトが見えたらば,
そこで休憩・朝飯にしよう,と心に誓っていたわけですが,
結局,仙台に着くまで,そんな状況はなかったという・・・
まぁおかげで朝飯も食わんと走り続けることとなり,無事10時の会議には間に合いましたとさ.

丁度入れ替わりに,別のチームが能代へと打合せに出たのだけれど,
ヒトの忠告も聴かんと,”もう晴れているから大丈夫ですよ~”と,車で行ったはいいが,
約束の時刻13時を大幅に超過し,彼の地に到着したのは夕方の16時だったそうな.
そう言う意味では,早朝でまだ良かったということなのかもしれないですね.

でも,冬の最初に,こういう体験をしておくと,
とりあえずその冬に関しては,大概の雪道におびえなくなる,という
ワクチンのような効果はある・・・とおもう.
たぶん.


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