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地図に残るモノを作る [思ったこと]

どこで読んだのか,
更には事例のキャラがこれで合っているのかも,すっかり忘れてしまいましたが,
”ウルトラマンとか鉄人28号は科学的にあり得ない” という話があって,
なぜならば,カラダが大きすぎるから,というのがその理由だったと思います.

 カラダは体積なので均等拡大すれば寸法の3乗で増加するが
 それを支持する足裏は面なので寸法の2乗でしか増加しない.
 よって足裏面積あたりが支持する重量がどんどん増加して
 立っていられない(めり込んでゆく)ことになる.おわり.

ふむ

その通りです.
だけれども,これは理学部系の発想だなぁ,とも思った記憶があります.
理学部系,つまり研究職・学術職・理論屋さんなど,科学の最先端を切り開く人達のこと.
別に肯定的でも否定的でもなく,傾向として,です.
でも,そのもう一方に,
どうも上記のような話を考えても,今ひとつ,すとんと納得しきれない
という,理系のカザカミにもおけなさそうな種族も,理系類の中にはいるわけですよ.実は.
(別に理系といわれる職業のヒトが,みんな始終こんなことを考えて生きてる訳じゃないですよ)
具体的には,工学屋,技術屋,エンジニ屋っていう種族ですけれど.

(たぶんどこの学校でも)工学部というところに行くと,
しばしばエライ(つまり化石により近い)センセイがおっしゃるキマリ文句に
工学の"工”の字は,天と地をむすぶパイプなんだよ~という台詞がありまして.
解釈としては,
”天(理論・自然摂理)は地(人間)に寄与する技術に応用できなければ
その意義はなく,それを行う(つなぎ合わせる)のが工学者である”
という,言葉で書くと,何ともドエラく崇高な理念らしいのである.たぶん.
・・・どうも,日々出勤しては,やっていることをはたと思い返すと,
そんな大層なことをしているとは思えないけれど.
現実はもっと,どろどろしている気もする^^;気のせいかもしれない.

要するに,最初っから,できません,っていう言葉を使うのがキライなんですよね,
技術屋・エンジニアっていう人種は.
これ何とかならんだろうか,と,理論・理屈を,差当たり半分程度は度外視で間引いて,
つい考えてみてしまう.

だって,再び話を戻しますが,
もしも万が一,鉄人28号を,本当に作らないといけない事態となったならば.
いや,べつに28号じゃなくても,16号でも1234号でも,
カネと時間と甲斐性があるなら,ついでに2号をつくったってかまいませんが.
いちおう,話の展開上28号を本当に作らないといけない事態になったとしますね.
そしたらね,
いくら理論上そうであっても,大きいから出来ませんって,回答はあり得ないのでね.
何としても何とかしないといけない(日本語になってないなぁ)
どうしてもどうかしないといけない(更に日本語になってないなぁ)

”こういうものを作りたい””こういう機能を実現したい”
そういった要望・依頼に対して,
あちこち専門家や研究者へ聞き回って,一所懸命本を読みまくって,ネットを調べ廻って
で,一応つたない知識と経験をもとに,ちょっとは頭をひねって工夫して,
何とかそれらの断片を,こんがらかりそうになりつつも,つなぎ合わせて形にする.
その過程を作り出していくのがエンジニア・技術屋だと私は思っています.

さて,このままでは本題にたどり着かないので,深入りはしませんが,
(言い出しにくいけれど,一応言っておきますが,ここまでの文章はまだ前段です^^;)
浅入りはするとして,件の28号がめりこむハナシにしても,
例えばN値が殆ど出ないような軟弱なところは,人間でもぬかるむので,さておき,
せめて車道とか歩道上限定でなら,道路設計されている以上相応の地耐力が期待できるので
なんとか全体の軽量化を図ることで立てるところまでもっていけないか,とか,
足裏の形状を工夫して沈下抑制できないか,とか
いっそプロペラとか揚力を得るための機構を設けて,
足裏の鉛直反力を低減できないか,とか,そういう事を無意識に考えてしまうんですね.
サガです.りっしんべんに生きるとかいて,サガです.SAGAサガです.びょーきかもしれません.

やっと本編.
そういう”エンジニア魂”,”なんとかしたいぞ症候群”
個人の妄想を遙かに超えて,会社規模でモノにしちゃった人々がいる.
前田建設ファンタジー営業部.
彼ら彼女ら,設計しちゃいました.
プロジェクト名:
銀河鉄道999メガロポリス中央ステーション銀河超特急発着用高架橋!
あのオープニングで,汽笛と共に999が昇っていく夢の架け橋です.
ちなみに見積工事費37億円(諸経費込み),
当然施工計画済みで,施工工期は3年と3ヶ月.
一応現行の積算体系と物価版で積算出来るようですので,今すぐ発注可能です(笑)

ちなみに,申し上げますが,前田建設さん,実在の会社です.
一応コンプライアンスに引っかからない範囲では(←最近はこの前書きがいるんだよなぁ)
仕事上の知人がいたりもするので,実はそういうことをやってると前から知ってはいたんですが.
昨日ふらりと丸善で手に取った製本版を,ぱらぱらとめくり始めたら動けなくなってしまいました.
そのまま立ち読みしつつレジへ.即お買い上げである.
P8284399.JPG
この本の凄いところは,元々の単なる漫画の線から,
きちんと理論的解釈に則った構造を推定し
それを実現するための技術的課題と,解決策を,ひとつずつ丁寧に導き出し,
冗談だからという手抜きや逃げを,一切せずに,
完全に具体化(施工)出来る成果にまで,たどり着いたところにある.
これが,技術力,エンジニアリング能力というものだろうと思う.
まぁREED工法を前面に打ち出しているのは,ご愛敬というところでしょうか(笑)

同じ橋梁屋でも私は道路橋がメインなので,いささか鉄道には弱いのだけれど,
(参考まで,鉄道橋と道路橋では設計思想から基準から何から大きく違うんですよ.)
うん,そうそう,とうなずくところもあれば,
へぇ~そうなんだ,と新たな知見を得るところも相当数ありました.
何にせよ,頭をひねって,モノを作り出していくって作業っていうのは,
大変そうな裏で,読んでいても,本当に面白そうだ.

  ※   ※   ※

例年,うちにはコンサル志望の学部3~4年次の学生さんが,夏期実習で来ていたのだけれども,
ここ数年は,ぱったりとやってこなくなった.
工学とくに建設・土木業界自体の人気が,このご時世とて,かつてほど無くなってきたものか,
はたまたコンサルは残業・休日出勤だらけだという事実が学生にまでバレてしまったのか,
(このブログが要因の一部でないことを祈りたいが^^)
その本当の理由は不明なのだけれど,
もしも,工学部の特に土木系に所属する学生さんで,将来の先行きについて,就職先について
幾ばくかの不安を感じている人がいたならば,ぜひこの本を手に取ってみてもらいたいと思う.
ものをゼロから作り上げていくという仕事,
特に土木という”地図に残るものを作っていく仕事”をするってことが,
こんなにもエキサイティングで,テクニカルで,悩ましくて,そして知的に楽しいということ.
(出来れば,完成したものを,長く大切に維持してゆくという仕事も含めて)
それを,是非,判って欲しいなと思いました.

少なくとも,私は,この本を読んで,久々に,そういった感情を思い出しましたのでね.
それは,子供の頃,小学生だった頃,ちらしの裏紙やノートや,時には画用紙に
細か~く,複雑に,いっぱいいっぱい書き込んだ機械や鉄橋や建物や
そんな,あんな,こんなの,設計図だったり姿図だったり.
いつしか,それを本当に,現実に,実現出来るような仕事に,いま就いているということの
充実感・・・だったのかもしれません.


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takako

ナイスナイス!!!
土木って夢のある仕事ですよね。
子供の頃の夢が今の仕事になっているって凄く素敵です☆
これからも益々頑張ってくださいね。
by takako (2007-08-29 20:23) 

Yamada

takako様,連続nice!どうもありがとうございます

確かに土木は夢は有るけれども,将来性には乏しい,って見えるのが
なんともイタいところではありますけどね(^^;
是非とも,これから飛び込んでくる新人君達には,
頑張って,土木の未来を切り開いていって欲しいところですが(笑)
まぁ,そんなことを言っても始まらないので,
我々中堅世代も,土木から夢が消えてしまわないように
もうヒト頑張り・フタ頑張りしないといけないところでしょうね~

維持管理計画や,劣化損傷調査などで,
多種多様な橋梁を見てますが,
どの橋梁にも技術だけではなく,知恵が詰まっています.
設計の基準となる示方書は同一でも,
現実には,当然ですが同じ設計条件は1つとて無い.
ぱっと橋を見て,一瞬??と思う構造やデザインが有り,
う~ん・・・と悩み,それでも判らず,う~ん,う~ん・・・と悩み,
後になってから,あっ,そうだったんだ!すげぇ~,と
先人の知恵に感動すること,しばし.

国交省が長寿命化の施策を予算化したことで,
公共事業の流れは直轄のみならず自治体管理のものも
明確に,新設から維持管理主体へと大きな方針転換を迎えました.
(つまり壊れてから作り直す,から,長く大事に使っていく,へ移行した)
今ある社会資本を,大事に長く使ってゆくということは,
見方を変えれば,その技術や知恵をも,
次の世代へと大事に受け継いでゆく,っていうことでも有るのかな,と
近頃,現場で橋を眺めつつ,ふと思ったりするのです.
by Yamada (2007-09-02 11:59) 

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